補償金は個別払いが原則だが・・・
個別払いの原則
土地収用では、土地に所有者の他関係人が当事者である場合は、補償は各人別にしなければならないとされています。これは収用による損失が各人別に生じるからです。
ただし、次のように各人別に補償金を見積もることが困難なときは、各人別にしなくてもいいことになっています。
①仮登記、買戻し特約登記がされた権利がある場合
本権者に対する補償金を供託すればよい。
②差押え、仮差押えの執行がされた権利がある場合
補償金を一括で配当実施機関に払い渡せばよい。
③先取特権、質権、抵当権が設定されている場合
担保権者は物上代位権を行使できるので補償金は一括して所有者に払い渡せばよい。
再開発の場合
第一種市街地再開発事業は、土地建物等(従前資産)を権利変換の対象とするので、従前資産に設定されている所有権以外の権利は権利変換により再開発ビルに移行されます。したがって従前資産について金銭補償が生じないので各人別に分ける必要性も生じません。
ただし、土地建物等の所有者等から金銭給付の申し出があり、従前資産について都市再開発法91条の規定に基づく補償金が支払われることになる場合は、次のとおり土地収用法と同様の取り扱いが都市再開発法にも規定されています。
①施行者が差押えまたは仮差押えにより補償金等の払い渡しを禁じられたときは補償金を供託する。(都再法92条1項4号)
②先取特権、質権、抵当権、仮登記、買戻し特約登記に係る権利を有する者から供託しなくてもよい旨の申し出がなかったときは補償金を供託する。(都再法92条4項)
③担保権者らは供託された補償金に対して物上代位権を行使できる。(都再法93条)
③差押えに係る権利については施行者は配当手続きを実施する機関に補償金を払い渡さなければならない。(都再法94条1項)