完全補償と相当補償
憲法29条3項に「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」とあります。
では、ここにいう「正当な補償」はとはどういうものでしょうか。これには「完全補償」「相当補償」という二つの考え方があります。
「完全補償」とは、行政の活動や公共事業によって生じた損失の全部を完全に補償しなければならないというものです。一方「相当補償」とは社会通念に照らして客観的に公正妥当であれば、完全補償を下回ってもいいというものです。
判例は、特定の公共事業における損失補償について完全補償を求めているのですが、当事者が個人的利益に関する事項として収用裁決を申し立てた範囲内において完全補償とすれば、正当な補償として扱われるとされています。